弁護士が教える「分けるとき」の考え方(後編)

たとえば、日常生活でも「食事代を割り勘にしよう」と言っておきながら、その支払額を「男性が多く出す場合」や「年次が上の者が多く出す場合」などがあります。弁護士として相談を受けるとき、多くの場面で「物」を分ける、「利益」を分ける、「責任」を分ける、「負担」を分ける、など、様々な「分ける」ことについての議論をすることがあります。そこで、物事を「分ける」考え方について述べてみたいと思います。

今回は、分け方について検討してみたいと思います。

  1. 頭数で分ける
  2. 利益の割合に応じて分ける
  3. 出費や負担の割合に応じて分ける
  4. 応用 レベニューシェア
  • 頭数で分ける

この「頭数で平等に分ける」というのは、どのような場合でも最初に検討される基本的なものでしょう。何かを分割するときには、ここから出発点になっているはずです。

いつも争点となるのは、この「平等」の考え方です。2人で分けるのであれば、半分ずつにすればよいはずなのですが、このとき、一方が「平等ではない」ということになると、ほかの分け方を検討しなくてはならなくなります。

  • 利益の割合に応じて分ける

そこで、分けた「結果の利益に応じて分ける」ということを検討します。

「その分けた結果得られる財産から誰が最も利益を得るか」を踏まえて分けるのがひとつの平等の考え方になるからです。しかし、この後はなにが「利益なのか」という点で当事者間での合意を形成するのが難しいことになります。

たとえば、相続財産でいえば、不動産を取得する場合に限っても、利益の見え方は違ってきます。

その不動産が賃料収入を得られる収益不動産なのか、それとも自宅として居住用に使用していたのかで、経済的な意味合いも、その不動産を取得する意味合いも変わってきます。また、仮に家賃収入などを考えた場合も、何年先まで考えればいいのかわからないなど、利益を決めることも一義的に明確ではありません。

そうすると、「利益」がなんであるのかが一見して明確に決まらない場合は、この考え方で平等に分けることは難しいと思われます。

  • 出資や負担の割合に応じて分ける

では、「出資や負担の割合に応じて分ける」ということはどうでしょうか。

この出資や負担の割合に応じて分けるというのは、株式会社の株主や、相続における寄与分の考え方につながるものですので、法的には比較的なじみやすい考え方だと思われます。

実際に財産形成のために出資や負担をした者が、もっともリスクを負ったといえるので、多くその財産を得ることができるというのは、合理的だと考えられます。

  • 応用 レベニューシェア

この分け方について考え方は、業務提携の方法の中で、レベニューシェアという方法をとる場合の一連の思考過程において重要となります。

レベニューシェアとは、複数の企業が事業を共同で営み、その事業で利益が出たら、その利益を分配するものです。

ITビジネスではよく採用される方法で、委託者の開発段階のコストを抑え、実際にその事業が利益が出てきたらその利益から報酬を受託者に支払うという合意で、最初から委託料の支払金額が固定されていないという特徴があります。

レベニューシェアは、

委託者にとっては、委託者の販売が非常にうまくいった場合には、受託者に対する報酬が当初の想定よりも高額になるため、委託者としてはどこまでその利益を分配するのか悩むところです。また、反対に利益が出なかった場合には、受託者への報酬の支払いが本当にゼロになってしまってよいのか、委託者自身も利益が出ていないのだから、分けられる利益がない、という主張が本当に通るのかという問題があります。

受託者にとっては、事業がうまくいった場合の大きな利益を期待していますが、当初の開発段階は報酬を得られないこととなりますので、開発がうまくいかなかったり、事業が失敗した場合には、開発コストに見合った報酬が得られないというリスクがあります。

ここで、得られる利益を基準に分けることが難しいという上記の考え方からすれば、委託者と受託者のリスクの大きさに比例して報酬を決める方が合理的ではないか、という考え方に結びつきやすくなります。

そのため、レベニューシェアの契約書では、より多くリスクを背負う受託者のリスクを基本的には勘案した内容となっているものがよく見られます。たとえば、受託者が、事業がうまくいかず利益がでなくとも、最低いくら報酬をもらえることとするのか、最低補償額を決める条項を盛り込む例があります。

また、その最低補償額で何年かければ受託者としての業務に見合うのかを計算して契約年数を定めることも検討します。

かように、レベニューシェアという「利益を分ける契約」というように思えても、最終的にはその出資や負担する割合で分け方決めている部分が相当あるといえるでしょう。

この記事を書いた人

中村 譲
中村 譲弁護士
約三年間、ベンチャー企業のインハウスローヤーとして企業経営に直接携わる立場で、様々な案件を扱ってまいりました。企業の中に身を置いたことで、経営レベルの案件も、営業現場レベルの案件も、大小の区別なく豊富に経験しております。
ベンチャー企業が成長していく過程では、未経験な業務に挑戦することばかりだと思いますが、「まずは行動しないと始まらないが、どの範囲まで進めていいのかわからない」という時に、法務とビジネスの観点から迅速な支援をさせていただきたいと考えています。
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