引きこもりや虐待、家庭内暴力などの精神障害に対する理解が進んでいる。また、その地域精神保健活動について。

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心の健康づくりについてかんがえたことがありますか。日本でも市町村がこころの健康にかかわる相談や生活支援をおこうなようなとりくみがはじまっています。

日本における精神保健の概要

我が国では1965年の精神衛生法改正により、保健所を拠点に精神病者を主な対象として地域保健活動が開始されました。一方、1960年代の高度経済成長期の中、核家族などの家族形態の変化、都市化、工業化などによる伝統社会などの社会問題が生じました。

とりわけ高齢化の進行もあいまって、老人と介護家族の問題など、新たな地域精神保健ニーズが現れてきました。

そのため国は、1987年の精神保健法への改正に祭し、国民は誰もが自分自身の精神の健康の保持および増進を図ること、また、国はその努力を支える義務を負うことなどが定められました。精神保健にかかわる今日の状況においても、

  • 引きこもり
  • 虐待
  • 家庭内暴力
  • 介護者の燃え尽き症候群

などの新たな問題が深刻化しつつあります。アルコール問題、薬物問題は若者や女性をも巻き込みながら問題の裾野を広げつつあり、年間自殺者は3万人台で推移しています。

さらに老年期の精神障害や発達障害など、地域の精神保健・医療・福祉ニーズは多様化しつつ増大しています。こうした動向および「こころの健康づくり」のニーズは、国際的な共通課題となっています。

精神障害への理解

「こころの健康づくり」は「こころの病」を正しく理解することが前提になります。こころを病む(精神疾患にかかる)ということは、様々な要因が関連し、錯綜しており、どう理解し対処するかについての医学的、統一的な見解を得ることは困難でした。

しかし、20世紀前半には脳科学、行動科学、精神医学の進歩を背景に構造的理解が進みました。

アメリカでの動き

1980年にはアメリカで精神疾患の分類と診断の手引きである「DSM-Ⅲ」が発表され、1992ねんの国際疾病分類第10版「ICD-10」へと引き継がれました。

ICD-10では、第Ⅰ軸の精神・パーソナリティー・身体障害を含む臨床状況、第Ⅱ軸の機能障害診断、第Ⅲ軸のストレス要因という3つの次元で説明、記載されました。

また、治療面でも各種向精神薬の開発や心理療法、医学的なリハビリテーション技術などの進歩により、多くの精神障害者が地域で生活をできるようになりました。

このような医学的な理解が進むとともに、精神障害について、精神疾患と精神障害を複眼的視点で捉えることにつながり、WHOは障害を機能障害、能力障害、社会的不利といった三次元に捉えた国際障害分類「ICIDH」を提示しました。

障害者の回復には医療と医学的リハビリテーションのみならず、心理的なリハビリテーションや地域生活を支援する環境整備や福祉的支援をも含む、包括的な対応策が必要であることを示しています。

日本での動き

日本においても、こうした考え方が学者、実践家たちから精神障害者福祉論として発展させられ、1993年に障害者基本法によって「精神障害者は『障害者』である」という言葉になりました。

この言葉には「疾患」と「障害」という二つの概念が含まれていますが、精神保健福祉法では医学的概念から定義し、障害者基本法では精神障害者を障害があるために継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける者と定義し、福祉政策の対象者として捉えています。

さらに、健康学としての「精神保健学」では、「こころの病」を「人は皆、一生を通じ、様々な日常生活の場で、解決困難な状況に陥り、不適応状態になって支援を必要とする状況に遭遇しうる。

そのとき、社会に何らかの支援を求める当事者を『事例:ケース』として捉え、保健、医療、福祉的支援を駆使して、社会全体で支え、回復支援を図るのが地域精神保健活動である」と理解しています。

こころの病、精神障害、こころの健康についての正しい理解を進めるためには、当事者、家族あるいは支援関係者だけでなく、国民一般の理解の向上が不可欠です。

昔は「精神病はわからない、治らない、こわい」というイメージがありましたが、家族会の活動や当事者の体験や思いがマスコミを通じて語られ、負のイメージがあった「精神病院」、「精神分裂病」などの言葉が「精神科病院」、「統合失調症」の用語に置き換えられ、また、各種の啓蒙活動によって「こころを病む」ということをより現実に即して総合的に理解できるようになりました。

そして今後も継続的かつ一貫性のある地域生活支援の積み重ねを通じて、その成果を地域の人々に還元し、適切な情報提供と知識の普及を務めることで精神障害にかかる偏見の軽減・除去が大切であり、回復とノーマライゼーションの推進が可能となります。

地域における精神保健

地域精神保健活動の展開には、医療・保健・福祉にかかる「活動圏域」を設定し、圏域内のニーズを把握し、地域特性を踏まえた計画をする「地域ケアシステム」の構築が必要です。この活動の舞台となる「地域」については現在、二つの動向があります。

一つは「地方分権の促進」という流れであり、もう一つは情報化、グローバル化を背景とした「統合」という流れです。

行政改革の方向では、身近な保健福祉サービス提供の役割を都道府県から市町村へと委譲し、市町村に地域保健福祉を担う福祉施設や保健センターの整備を図ります。その一方、地域医療については、精神科医療施設の機能・役割分化を推し進めながら精神科救急医療体制なども含め、地域ケアシステムの整備が図られつつあります。

「統合」という方向においては、病気や不健康を縦割り行政的に切り離し個別に取り上げるのではなく、「地域での生活者」としての個人的ニーズを総合的に把握し、地域生活支援サービスを展開するという流れを生み出しました。

今日、新たな精神保健福祉の課題として社会問題となりつつある

  • 虐待
  • 家庭内暴力
  • パーソナリティー障害
  • PTSD問題
  • 超高齢社会の到来による老人退行性疾患

などは、生活全般の要素にかかわる包括的・総合的な対応が必要となってきます。

このような多様なニーズに対応するには、数少ない専門家に任せるのではなく、地域内の様々な立場の人々や関係諸団体の力の統合力が不可欠であり、市町村がこころの健康にかかわる相談や生活支援の第一線の役割を担うことになりました。

地域における「こころの健康づくり」を着実に進めるためには、地域精神保健福祉計画を策定し、実践し、評価する仕組みを導入し、そのプロセスと結果を地域住民に提示し、公共、民間の協働による地域づくりに取り組むことが大切でしょう。

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