こんなに大変!『医薬品』ができるまでの過程とは

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製薬会社は、『世界市場』に新薬が“投入できれば”莫大な利益に繋がります。また、製造業の中でも取り分け『利益率』が高いことで知られていますが、その半面一つの新薬を市場に出すまでには、数百億円という巨額の『研究開発費用』が掛かります。製薬会社の趨勢は新薬開発に掛かっているため、新薬の研究開発は“数品目を同時並行的”に行うのが一般的です。そのため、売上高に対する研究開発費の占める割合は、他の産業の5%前後に比べ20%と突出して高くなってしまいます。

その上、新薬が世に出るまでの年月は、最低でも10年くらい手間取ると20年近く掛かる場合があります。しかも、他の産業との決定的な違いは、新薬開発の『成功率』がなんと“1万分の1以下”と経営的には極めてリスクが大きいのです。

新薬の『種』の探索

新薬の候補物質の『探索』は、複数の研究グループで『対象疾患』ごとに分かれて行います。研究者は、先ず対象疾患に対する“作用を発揮するためのアプローチ(作用機序)”の仕方を決めて、目標の作用を発揮する『候補物質(シーズ:種)』を探します。

その探し方は、“候補物質とそれに似通った物質”を含めると数百から数千種類に上ります。その中から最も効果が高い物質を“篩分けしながら(スクリーンニング)”選び出し、選び出した物質から更に“派生する化合物”を合成します。

前臨床試験とは

最終的に絞り込まれた新薬の候補物質は、『薬効』や『安全性』を明らかにするため、『培養細胞』やラットやマウスなどの動物を用いた『前臨床試験』を行います。具体的には、

  1. 『毒性試験』
  2. 『薬理試験』
  3. 『薬物動態試験』

の3つの試験です。

毒性試験は、人に投与した場合の“有害な作用”の程度を確認し、人の安全性を確保することが目的です。一般的に、薬剤は投与量に比例して薬効を発揮し始め、ある投与量を超えると毒性(副作用)が発現し、場合によっては死に至ります。

この試験では、薬の作用が現れる最も少ない『最小有効量』、最大の作用が現れる『最大有効量』を調べます。中毒症状が現れる『中毒量』は、50%の薬理作用が発現してから50%の致死量までの間隔が多きいほど、安全で効果が長い薬剤という評価になります。

因みに、毒性試験の内容は致死量だけでなく、

  • 『単回投与毒性試験』
  • 『反復投与毒性試験』
  • 『癌原生試験』
  • 『細胞毒性試験』
  • 『遺伝毒性試験』

など様々な角度から検証され

  • マウス
  • ハムスター
  • モルモット
  • ウサギ
  • イヌ

などの動物が用いられます。これらの試験の基準を全てクリアーしたら、いよいよ『臨床試験』に進みます。

臨床試験とは

臨床試験のことを『治験』と呼びます。これは実際に新薬の候補物質を“人に投与”して、その有効性と安全性を評価・確認する試験のことです。この試験のプロセスは3つの段階を踏んで行われますが、その段階のことを『相(Phase)』といいます。

第1相試験では、“少数の健康な成人”を対象とします。次の第2相試験では、“少数の患者”を対象とします。最後の第3相試験では、“多数の患者”を対象として、『対象薬』との比較を含めた大規模試験を行います。

3段階の臨床試験の全てに良好な結果が得られた候補物質のみが、『医薬品医療機器総合機構(厚生労働省の外郭団体)』において科学的な評価と書類の審査を受け、そこで承認されて初めて医薬品として“産声を上げる”ことになります。

製薬会社は臨床試験を開始する前から、医薬品医療機器総合機構に『治験相談』という制度で様々な助言を受けます。この治験相談は、第1相から第3相までの様々な段階で行われますが全て有料なのです。

因みに、治験前相談は1件あたり600万円ですが、治験終了時までの3段階を経るためには、相当額の費用が発生します。最後の承認審査の料金は3,000万円ですから、合計すると軽く1億円以上の金額になります。

承認審査

承認審査においては、

  • 医学
  • 薬学
  • 獣医学
  • 生物統計学

などの専門委員で構成された『チーム審査』方式により行われますが、併せて臨床医師などの立場からの意見を踏まえて最終判断が行われます。これら全ての審査に合格すると、厚生労働大臣から新規医薬品としての『製造販売承認』が与えられます。

日本の場合は、審査件数が多いことと審査人員が少ないこともあって、可なり長期間を要すことが問題となり、『ドラッグ・ラグ』との批判を受けることがありました。そのため、製薬会社では自己防衛のため“国外での治験”を行うようになり、国としての体制整備が求められていました。

その結果、これまでの18か月から12カ月程度にまで6カ月短縮する成果が現れています。

製造許可

製薬会社が“医薬品を製造する”ためには、1品目毎に都道府県知事の『製造許可』が必要です。詰まり、新薬として製造販売承認を受けた医薬品を製造するためには、その『製造所(工場)』が“製造するための条件”を備えていることの“立ち入り検査”を受ける訳です。

この立ち入り検査の基準は、厚生労働省の『省令』で定めた『GMP(Good Manufacturing Practice )』と呼ばれる国際基準のようなものです。日本語にすると『医薬品の製造管理および品質管理に関する基準』です。

通常、立ち入り検査は、都道府県から派遣されたGMP専門官3~5名による実地確認で3~5日を要します。省令の要件全てをクリアーした場合、後日文書で都道府県から『製造許可』が交付されます。

GMPが掲げる基本要件は、

  • 1つ目は製造段階における人為的ミスを最小限に抑えること
  • 2つ目は汚染および品質低下を防止すること
  • 3つ目はより高度な品質を保証するシステムを構築すること

です。

そのため、工場の組織体制は製造部門と品質管理部門を分離し、夫々の責任と権限を独立させます。その上、原材料受入、製造、包装、中間製品、最終製品、出荷までの各ステージにおいて、品質管理部門の厳しいチェックを受けます。これら各ステージの検査や試験をパスしたものが出荷されるように、

  • 『全社統合システム(EMS)』
  • 『製造管理システム(MES)』
  • 『LIMS(品質管理システム)』

といった、コンピュータによる総合的な管理システムが構築されています。

因みに、GMPには2つの側面があります。1つは『ハード(Hard wear)』です。もう1つは『ソフト(Soft wear)』です。ハードとは、建屋などの構造設備、水や空気を供給する製造支援設備、製品を製造する機械・機器などです。

一方のソフトとは、製造条件などを定めた製品標準書。作業の手順を定めた標準作業手順書(SOP)、作業者の衛生管理に関する手順書、その他の必要な基準や手順を定めた文書類を言います。これらは何れも『法律(厚生労働省令)』で定められたもので、一つでも不足や不適切なものがあれば、製造許可を受けることができないのです。

終わりに

今から15~20年前に歩き始めた新薬の候補物質の長い旅が終わりを迎え、やっと正式な名前をつけて貰い世に出て行きます。製薬会社の仕事は、新薬を世に出した後にも多くの医師や患者さんの情報を提供してもらい、 更に“良い薬に育て上げる”役割を担って活動を続けて行きます。

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