「足が震えています」と喜びを語った。パルムドール受賞の是枝作品『万引き家族』をチェック!

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5月20日に日付が変わった日本時間未明に、第71回カンヌ国際映画祭にて是枝裕和監督作品『万引き家族』がパルムドール賞を受賞との吉報が届きました。「さすがに足が震えています。この場にいられることが本当に幸せ」と喜びを語られたそうです。おめでとうございます!

日本映画だと1997年今村昌平監督作品『うなぎ』以来となります。今村監督といえば、受賞するとは思わず早々に帰国してしまい、映画関係者を大慌てさせた(結局カンヌに戻れず、主演・役所広司さんが代理受賞)エピソードを挙げれば「ああ!」と思い出す方も多いのでは。あの騒動から是枝監督が受賞された今日まで、どれほど久しぶりの快挙なのか実感しますね。

万引き家族』は、6月8日(金)より全国ロードショーを予定しています。

是枝監督が描く家族像の最新作

『万引き家族』は、脚本も是枝監督によるもので一説には構想10年とも言われています。東京の下町で今にも崩れそうな家屋に住む、いわゆる社会の底辺にいる5人家族が物語の軸。

家主である祖母の年金、父と息子の万引きで生計を立てている日々に、冬の寒空の下で震える少女と遭遇します。

見かねた父が連れ帰ると、小さな体に刻まれた傷跡から境遇を悟り、6人目の家族として迎え入れるのでした。その後ある事件をきっかけに一家は散り散りとなり、各々が抱えた秘密や想いが明らかにされていく120分の長編です。

父役リリー・フランキー、母役安藤さくら、息子役城桧吏、母の妹役松岡茉優、祖母役樹木希林、少女役佐々木みゆを主軸キャストに、柄本明、緒方直人、森口瑤子、池脇千鶴、高良健吾、池松壮亮というスクリーンに欠かせない面々が集結します。

映画ポスタービジュアルが家族団らんの温かみあるポートレイトなので、ほのぼの系の第一印象を受けますが、タイトルが幼い筆跡で「万引き」と書かれていてザワッとさせられます。

予告映像はシリアス色が強めなものの、音楽担当に細野晴臣を迎えているあたり、絶妙なブレンド編集を是枝監督は施しているでしょう。

試写などで一足早く鑑賞した人々から「ザラッと胸に残る」という感想があり、話題作だから♪と軽々しく踏み込んではいけない予感をさせますね。フランス映画が「素敵な風景とラブに満ちたものばかりじゃないよ」というのと似ている気がします。

http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

そもそもパルムドール賞って?

日本人が海外で映画賞をとることは嬉しい反面、色々ありすぎて違いが分からないという声も聞かれます。

特に権威あるのが世界三大映画祭と呼ばれる、フランス・カンヌ映画祭、イタリア・ヴェネチア映画祭、ドイツ・ベルリン映画祭です。コンペティション部門とその他の部門がありますが、正式とされているのはコンペティション部門になります。

それぞれの最高賞が、カンヌはパルムドール賞、ヴェネチアは金獅子賞、ベルリンは金熊賞です。北野武監督は『菊次郎の夏』でパルムドール賞を有望視されましたが惜しくも逃し、『HANA-BI』で金獅子賞を受賞されました。

日本人のパルムドール賞受賞は先の今村監督と是枝監督、そして世界にその名を轟かせている黒澤明監督だけ。つまり是枝監督作品は、世界のクロサワ作品と並んでワールドワイドに認知されることとなります。

家族を撮り続けて10年

是枝監督作品のキーワードのひとつに「家族」があります。式典後の記者会見でも「隅に追いやられたり、見過ごされている家族をどうしたら可視化できるか」とコメントされ、社会でもっとも小さい集合体を見つめるまなざしに熱量を感じます。

家族をテーマにすると「人とはこうあるべき」「人生観を変えてやろう」なメッセージ性を注目されますが、当の監督はそれを「おこがましいじゃない」と過去のインタビューですっと肩すかししています。

ざっくり10年、家族を切り口にした映画が続いたのは、是枝裕和個人の環境が目まぐるしく変わったことが大きかったようです。母親が亡くなり「子どものポジション」が消え、子どもが生まれて「親のポジション」についた。

家族の中で自分の役割や立ち位置が大きく変わると、見えてくる景色も比例して違ってくると語っています。

映画とは「観た人が、自分の人生と照らし合わせて持ち帰ってくれるもの」であれば良いというのが是枝監督のスタンス。メッセージを強く発したり、人の人生を変えたければ、宗教家になっていたとユーモアも交えられたそうです。

最新作『万引き家族』は、目を逸らしたくなる光景を撮っているかもしれません。けれど観た人に持ち帰るのは、日本の闇だけでなく「厄介だけどかけがえのない景色」でありたいですね。

観ておきたい作品

黒澤明監督にはパルムドール賞、金獅子賞、金熊賞の受賞歴、今村昌平監督には2回のパルムドール受賞歴があり、こうして名を連ねると是枝監督はまだ青い印象を受けるかもしれません。

しかし青さは若さ!今年6月で56才を迎えるとあらば、創作意欲も脂のノリもピークが長く続くということです。

世界的権威のあるパルムドール賞を受賞されて、映画好きの外国人は日本人ならほぼ全員、是枝作品を知っていると思うかもしれません。質問されたとき「是枝のコレ!」と返せる作品をピックアップしました。

『誰も知らない』

2004年に公開。実際に発生した子ども置き去り事件を題材に、母親が失踪し、残された少年と幼い弟妹との、誰も知らない日々を描いた作品です。主演の柳楽優弥さん(当時14才)が、カンヌ映画祭史上最年少そして日本人初の最優秀主演男優賞を獲得して話題となりました。

柳楽さんの目力、YOUさんの空気感、映画の冒頭からあまりのナイスキャスティングに唸ります。

『歩いても 歩いても』

2008年に公開。男は再婚したての妻とその子どもを連れて、15年前に亡くなった兄の命日に帰省。実家で久しぶりの集い、年老いた両親、人生はちょっとだけ間に合わないことに満ちているのを噛みしめる作品です。原作も是枝監督が執筆。

俳優阿部寛とのタッグは本作からで『奇跡』『ゴーイング マイ ホーム』そして『海よりもまだ深く』では再び樹木希林との親子を再演しています。

『そして父になる』

2013年公開。6才になる息子を持つ二家族に、ある日産院から告げられた事実。子どもの取り違え。手塩に育てた息子と血の繋がる他人の子を前に、親子とは?家族とは?幸せとは?を突き詰めていく作品です。

独身の福山雅治(当時)とリリー・フランキーが父親役なのも注目されました。両俳優も本作以降、是枝作品の顔として出演が続きます。

『海街diary』

2015年公開。14年前に家を出たきりの父親が東北の地で死去。鎌倉に住む三姉妹(綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆)に訃報が届きました。告別式へ赴くと、出迎えてくれたのが腹違いの妹(広瀬すず)。

「家族を捨てた父が、残してくれた家族」と向き合い、三姉妹は四姉妹として生活を共にします。原作は同タイトルの吉田秋生の漫画。読んだ監督からの希望で映画化が実現しました。

最後に

最新のVFXや爆音も必要ない作品の特性上「映画館へわざわざ行かずレンタルで充分じゃない?」という声も聞こえてきそうですが、デジタルでや迫力だけでは伝えきれないものが是枝作品には詰まっています。

絹糸で紡いだような繊細な心情、小説の行間を読み解くような心と心の対話、そうした「言葉にできないコトバ」にどっぷり浸かるには、やはり映画館が一番です。ぜひこの機会に足を運んでみてください。

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