学童期・青年期・老齢期における精神保健(メンタルヘルス)、心の健康サービスについて

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 「精神保健」という言葉は時代とともに変わってきており、その内容も大きく拡がっています。精神保健の前身である精神衛生という言葉は、主として精神病者の処遇改革に使われてきましたが、今日で精神保健とは「心の健やかさをどのように育て、保ち、さらにどのように高めるか」というものとして広義に捉えられ、「メンタルヘルス」と同義に使われることになりました。すなわち、「心の健康サービス」と捉えることができます。

日本の健康サービスについて

 日本の健康サービスは、

  • 保健
  • 医療
  • 福祉

の3つの異なった領域から成り立ちました。行政上も独立的に運営され、地域における精神保健は保健所が主として担ってきましたが、2002年の社会保障審議会の精神障害分科会で「入院医療主体から地域保健・医療・福祉を中心とした在り方への転換」が提言され、大きな変化がもたらされました。

2003年の「心身喪失などの状態で重大な他害行動を行った者の医療及び観察等に関する法律」や、2005年の自立支援法により、地域・住民主体の保健・医療・福祉サービス体系化の構築が進められました。

実践面でも、多職種や第三の参加及び連携による「チームアプローチ」や、地域計画においてもPlan-do-seeに沿って事業が進められる考え方が定着してきました。

一方、総合的な相談窓口に寄せられる心の相談は、

  • 統合失調症
  • 認知症
  • ひきこもり
  • 発達障害

など、相談内容も複雑で困難な事例が増えてきています。

包括的な地域サポート体制を構築するには、専門職の参加とともにホームヘルパーの派遣、ショートステイの受け入れ、グループホーム、入院者の退院促進支援、通所授産所、就労支援の整備なども求められています。

精神保健を詳細にみる場合、「人生のライフサイクル」、すなわち

  • 胎児期および乳幼児期
  • 学童期
  • 思春期
  • 青年期
  • 成人期
  • 老齢期

に分けて考察することができます。発達段階によって、精神保健上起こりやすい問題は変わり、それぞれの年代で迎える危機や葛藤が異なるからです。

学童期における心の健康サービス

小学校在学中の時期です。問題行動は少なく比較的安定した時期とされていましたが、その境界は不鮮明になりつつあります。家族や社会の変化とともに心理的、身体的な成長度合いは、子供によって様々であることを最初に認識しておくことが大切でしょう。

生活面では、少子化、核家族化の影響を受けている一方、離婚が急増し単身家庭が増加して、経済的にも苦しい子供がいることを忘れてはなりません。学童期の問題は、非社会的行動と反社会的行動に区分されます。

非社会的行動は、児童の年齢相応の社会化に必要な他者とのコミュニケーションが適切に行えず、親への過度な依存や、仲間関係が形成されずに回避的であったり、引きこもったり、また不登校や心身症など、葛藤が自己完結的に留まります。

反社会的行動は、社会的規範から逸脱し、周囲の者が迷惑を被る暴力、犯行など社会を巻き込む行動です。学童期の問題を社会的な事象として捉えられたものに、

  • 「授業中、立ち歩きや私語、自己中心的な行動をとる児童によって、学級全体の授業が成立しない学級崩壊」
  • 「児童生徒が一定の人間関係のあるものから心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛をもたらすいじめ問題」
  • 「親による児童虐待問題」

などがあります。これらの問題を精神保健の視点で考察する時に留意すべきことがあります。

  • 学童期は心の弾力性に富み、変化の多い時期であり、子供に否定的なレッテルを貼ることには慎重であること。
  • 学童の症状は一過性であったり、休日には消えるなど揺れやすい傾向があり、成長・発達で解消していく場合も多いこと。
  • 心身症、自律神経失調症などの病名で分類することもあるが、その診断名で影響を受けることも考慮すること。
  • 問題行動は、子供からの周囲へのSOSあるいは支援の端緒と考えること。
  • 問題発生後の対処に奔走したり、当事者の親子関係のみにとらわれるのではなく、できる限り地域の支援システムにつなげて問題を聞いていくこと。

青年期における心の健康サービス

18歳から30歳ごろまでとするのが妥当です。高校を卒業し、大学生となり、または就職し、社会人となり、結婚をするところまであります。この時期の人生的課題は、自我同一性の確立と人生の選択です。

青年期の特徴は熱心さ、強い興味、知的な好奇心と、無感動、惰性、知的無関心の交替、あるいは極端な自己中心性とどうしようもない卑下とが共存するなど、両極の心性の併存とその間の揺れ動きです。

時代的な社会性によって、両極のどちらかへの傾きへの優位性が変化するものと考えられます。社会的な事象としては1960年代の「学生運動」、その反動としての無気力・無関心・無責任の「三無主義」、物質文明からの離脱を試みた「ヒッピー」、そして世俗・世間を捨て新興宗教に走った「オウム真理教事件」などがあります。

エリクソンは青年期を自己の成長と歴史・社会が相克する時期と規定しています。その病理を次のように提示しました。

  • 自意識過剰
  • 選択の回避と麻痺
  • 対人的距離の失調
  • 時間的展望の拡散
  • 勤勉さの拡散
  • 否定的アイデンティティーの選択

青年期の最大の課題はアイデンティティー確立であり、人生全体において精神の基盤を確かにする時期でもあります。

21世紀になり産業構造、社会構造が激変し、その結果、企業は低賃金の派遣社員で構成することが可能となり、20代の就労者の半数は身分不安定な派遣社員となりました。多くの若者が貧困層を形成するようになり、「ニート」や「フリーター」、「引きこもり」も急増しています。

老齢期における心の健康サービス

老齢期に起こりやすい精神症状としては認知症、うつ病、せん妄、妄想、不安などがあげられます。それに加えて、現代では孤独な存在に置かれていることも考慮しておかなければなりません。

「独居老人」や「孤独死」が話題になる時代であり、老人の精神保健対策の充実が重要となってきます。

  • 老人の心の健康づくりを目指す「積極的精神保健」として、地域に在住している老人およびその家族への啓蒙活動や教育活動を中心として、とりわけ生きがい教育は重要です。
  • 精神的健康を損ないつつある地域の老人や、すでに精神障害をもつ地域の老人に対するサポートを行う「支持的支援」として、保健・医療・福祉との密接な連携を実現するサポートシステムの構築も課題です。
  • 両者の統合を目指す実践的な地域保健活動である「総合的精神保健」として、地域住民に働きかけ、精神保健活動の拠点づくりが必要です。啓発・教育活動を通して障害者観を変え、また、地域保健活動を行う職員の研修やボランティアの育成を行い、そして精神に障害がある者もない者も、ともに住むことができる地域づくりを目指すことです。

最後に

万が一うつ病に罹ったら、どのように自立を支援されていくのかについて次の記事で紹介しております。続けてお読みください!

あなたの大事な人がうつ病に罹ったら ~自立支援医療(精神通院医療)について~

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